骨折入院中に書き始めた小説です。
あらすじは公開していましたが、いよいよ本編も公開しようかな…と。
構想を練っていると、どんどん内容が拡がることに。
あれもこれも、と考えると、収拾がつかなくなりそう(苦笑)
断捨離が重要かな? と思う今日この頃です。
第一章 桃太郎は九鬼山を目指す
やりましょう やりましょう
これから鬼の征伐に
ついて行くならやりましょう
(1)岩殿山の赤鬼
「うまくいったな」
太郎は村人達を説得できたことに安堵した。
周りでは村の女たちが、会合でふるまわれたおつけ団子(黍団子の原型といわれている)の後片付けの真っ最中だ。
太郎は村人達を説得できたことに安堵した。
周りでは村の女たちが、会合でふるまわれたおつけ団子(黍団子の原型といわれている)の後片付けの真っ最中だ。
彼は犬目・猿橋・鳥沢集落の村人達を集めて、いかに南の山に住む鬼達が危険かを説き続けていたのだ。
それがやっと今日、山狩りの方針が決まった。
これで安心できる。
太郎は思い出していた。
元々の始まりは猿橋集落に住む赤ら顔の村人の迷惑行為だった。
村になじめない彼は昼間から酒に酔い、わけもなく隣人をどなりちらすことが頻繁で、手を焼いた村人たちは彼を村から追い出したのだ。
そして行く当てのない彼は、いつしか近くの岩殿山の洞窟、今では鬼の岩屋と呼ばれている洞窟に住むようになったとか。
村人は彼を赤鬼と忌み嫌い、特に子供たちには決して山に近寄らないように教えていたのだった。
そんな中でも太郎と西の里に住む次郎、妹のナンの三人は、そんな赤鬼とも親しかった。
村人は彼を赤鬼と忌み嫌い、特に子供たちには決して山に近寄らないように教えていたのだった。
そんな中でも太郎と西の里に住む次郎、妹のナンの三人は、そんな赤鬼とも親しかった。
山の中で偶然知り合い、交流が始まったのだ。
赤鬼は子供たちにはやさしく、山の実をとってあげたり、一緒に山の中を連れて回ったりする遊び仲間に近い存在だった。
特に妹のナンは、優しい赤鬼に懐ついていた。
「鬼さん、鬼さん」と呼んで、鬼ごっこが定番の遊びだったのは笑い話だ。
特に妹のナンは、優しい赤鬼に懐ついていた。
「鬼さん、鬼さん」と呼んで、鬼ごっこが定番の遊びだったのは笑い話だ。
たぶん一人で暮らす赤鬼にとっては、子供たちとの繋がりが人との唯一の繋がりだったのだろう。
そしてある時、事件が起きる。
子供たちが赤鬼と会っていることを太郎の両親が知ることになったのだ。
そのことは次郎とナンの両親にも伝えられた。
親たちは三人をきつく叱り、岩殿山へ行くことを禁じることに。
「鬼さんは悪くない」「鬼さんは優しい」と何度も訴えるも、親たちは聞く耳を持たない。
特にナンの落ち込みは酷かった。
それからの彼女は家に引きこもりっきりとなり、食事もどんどん細くなる。
そんなナンを心配して、次郎は太郎に相談した。
そして太郎はナンのために、赤鬼に会うことを決意する。
そんなナンを心配して、次郎は太郎に相談した。
そして太郎はナンのために、赤鬼に会うことを決意する。
最後のお別れの機会を設けようと。
翌朝、親の目を盗んだ三人は、朝一番に岩殿山へ向かった。
「お父やお母は気づいていないな」太郎は二人に確認する。
「うん大丈夫」と次郎は答えた。
翌朝、親の目を盗んだ三人は、朝一番に岩殿山へ向かった。
「お父やお母は気づいていないな」太郎は二人に確認する。
「うん大丈夫」と次郎は答えた。
ナンも黙って頷く。
そして彼らは昼頃に赤鬼の住む洞窟に到着した。
ただ赤鬼は出かけていていなかったが。
待つこと数時間、次郎は洞窟の奥に置いてある小さな壺が気になりだした。
そして彼らは昼頃に赤鬼の住む洞窟に到着した。
ただ赤鬼は出かけていていなかったが。
赤鬼が大切にしている壺で、以前から何だろう?と気にしていたものだ。
お酒かな?と思っていたのだが、好奇心から蓋を開ける三人。
甘い匂いが広がる。
食い意地が張っている太郎がまずは口に入れる。
甘いゼリーのような飲み物が喉を通る。
甘いゼリーのような飲み物が喉を通る。
「これはうまい」
と、そこへ赤鬼が戻ってきた。
壺を開けている三人をみた赤鬼は、顔色を変え大声で叫ぶ。
「飲んだのか!?」
「飲んでない!」
ばつが悪そうにとっさに嘘をつく太郎。
「そうか、それは子供には毒だから飲んではいけない物だ」
赤鬼は壺をしまいながら、そう話した。
太郎の顔がほんのり赤いことには気づかなかったようだ。
そして赤鬼と三人の最後の楽しい時間が始まる。
あまりの楽しさに時が過ぎていく。
ふと気づくと日はかなり傾いていた。
ナンはうとうと舟を漕いでいる。
村では朝から子供たちがいないことに、大騒ぎが発生していた。
(2)誤りの鬼退治 へ